「輪舞−ロンド」解説

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SIDE.2『殻』 タマゴになってしまおうというわけなんだろう

 殻に閉じこもる少女のお話です。卵に特別な意義を考えた最古の高度文化は、紀元前三千年紀のエジプトだったそうです。
 その後、世界を生み出す宇宙卵という概念が多くの文明で生まれました。タマゴは誕生と再生の象徴とされてたのです。復活祭のイースター・エッグはその延長にあります。ですから、彼女がピンクのタマゴとなれば、まだ再生の望みはあったのかもしれません。
 しかし、未練を残す彼女は、タマゴでなくミノムシになってしまいました。ミノムシは、鱗翅目ミノガ科に属するガの幼虫の通称です。子供に裸にむかれても、そこらの紙屑で蓑をつくる様子に、哀れみを感じたものでした。
 ところで、最近ミノムシを見かけなくなったと思いませんか?日本で一般的なミノムシは オオミノガの幼虫ですが、多くの地域で、事実上絶滅しています。激減の原因は、中国から来たと見られる、オオミノガヤドリバエという寄生バエです。
 ミノムシになる女の子もなかなか魅力的だと、私は思うのですが、もはや現実のミノムシもいなくなってしまったのですね。短い間に多くの事が変わってしまうものです。
 「月」とは逆に、この作品の谷山浩子のテキストは非常に具体的で詳細です。吾妻ひでおの描く、気の弱い女の子は可愛くて実に良いです。八〇年代を彷彿とさせます。
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