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あとがき
 いかがでしたでしょうか? 『まりちゃんの大冒険(まり冒)』少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
 私の初めて書いた小説、『まりちゃんの大冒険)』が誕生したきっかけは、今から二年ほど前、シンガーソングライターの谷山浩子さんのコンサートに行く為に、東京へ出かけた時、後藤氏に出会った事です。その折、元々人形に興味を持っていた私は、横浜にある『横浜人形の家』という人形館にぜひ行ってみたいと思っていました。ちょうどその頃パソコン通信の谷山浩子コーナーで知り合った、横浜在住のオデッサさんこと後藤氏がそれを知って「もし、良かったらガイドして上げましょうか」と申し出て下さったのです。『まり冒』に出てくる後藤氏のモデルはこの後藤さんです。小説に登場する少し過激な後藤氏と違って、本物の後藤氏は温厚で品のいい紳士でした。
そしてその後藤氏の持って来た黄色いグランパパのバッグの中に、人形のまりちゃんが入っていたのです。「これが、まりちゃんです」とあたりまえの様に私にまりちゃんを見せる後藤氏。これが、『まり冒』の始まりでした。
 大きさは五十センチぐらいでしょうか? 白い肌に腰の辺りまで伸びたブロンドの髪、大きくパッチリとして、相手の心まで見透かしてしまうような両目。常に「何か頂戴!」と言わんばかりに広げられている両手。私は小説の主人公、佐伯光司が後藤屋で、始めてまりちゃんと出会った時の様な驚きを感じました。またこれほど一体の人形を大事にされている紳士に出会ったのも初めてでした。『横浜人形の家』の中を見て回っている間も、後藤氏からは人形に関するいろんな事を教えて貰いました。それが小説の中に生かされています。
 谷山浩子さんのコンサートの終わった後、谷山ファンの集いに参加したのですが、その時、他の登場人物になった面々に出会いました。毎月『パステル通信』という谷山FCの会報を発行されている小林さん。パソコン通信のホスト局(TM−NETU、現在は休局)を運営されている田村さん。私の頭の中の『まり冒』に、これら個性的で愛嬌のある人達がどんどん入ってきました。
 私は東京から九州に向かう帰りの列車の中で「まりちゃんに後藤氏、そしてあの人達を登場させたお話を作ったらきっと面白いだろうな…」と考えました。お話の中では多少誇張されていますが、皆さんの性格は実際と大体似ています。寺西教授、平田刑事、寺戸女史なども、『パステル通信』を通じて知り合った方達で、本人達の了承も得ず、私の独断で後から登場してもらいました。そして気が付くと、超常現象調査会にはトラブルメーカーはいるけど、トラブルシューターが一人もいない事になっていたのでした。みんな重大な使命があるのにそれをいつも笑い飛ばし、あるがままに生きて行く。こんな生き方が出来たらいいなと思って、超常現象調査会は生まれたのです。所帯じみたヒーロー&ヒロインと言うのも一興でしょう?
 さて、こんな怪しい連中と超能力を持ったまりちゃんの活躍を本にしよう!と後藤氏が音頭をとり、田村さんのパソコン通信ネットワーク(TM−NETU)に[まり冒出版委員会]のボードを作ってもらいました。また編集委員(勿論、実在の超常現象調査会のメンバー)の方達に文章の手直し、本にする為の様々な大変な作業をして頂いたのでした。当然、初めて書いた小説と言う事もあって、あちこちつじつまが合わなかったり、誤った表現、誤字・脱字は[ケケケケケ!]と鬼や妖怪のごとく、後から後から湧いて出てきました。また物語のイメージを掴む為に、舞台となる真冬の京都へ編集委員達は出かけ、物語に出てきた観光名所(清水や東寺)で人形を並べて特撮すると言う凄じい事もしました。小説に出てくる市松人形の胡蝶の故郷『市松人形の工房・朋(とも)』にも見学に行きました(実は胡蝶は、私が出会った初めての人形なのでした)。この編集委員の方々のご助力がなければ、物語を完成する事も出来なかったと思います。
 また、この本を作る過程で更に嬉しかった事は、挿絵を描いて頂いたケロムシ松田さんと『パステル通信』を通じて知り合えた事です。ケロムシ松田さんはプロのイラストレイターをされていますが、まりちゃんと胡蝶のイメージイラストを送って頂いた時には、感激で言葉もありませんでした。元の人形のイメージを残しながら、見事に[生き人形]を描ききって下さいました。
 『まり冒』は、これからも書き続けて行きたいと思います。どの様な形になるかは分りませんが、またどこかでまりちゃんや胡蝶達と出会った時には、どうか宜しくね。
 そして最後に…。あなたの家で忘れられたままになっている、お人形さんはいませんか? もしいたら、そっと抱き上げて何か話しかけて上げて下さい。ひょっとしたらあなたにも、人形に命を吹き込む魔法の力があるかも知れません。ある日、突然、「こんにちは!」って言いながら、まりちゃんがあなたの所へ舞い降りて来るかも知れませんよ。

  一九九三年十二月三十日
草子洗


「サイキック・ドールズ」シリーズ1
まりちゃんの大冒険 第一話 古都の鬼

一九九三年十二月三十日 第一版発行

著 者  草子洗
発行者  後藤まり子
発行所  すーぱーがーるカンパニー
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