「輪舞−ロンド」解説

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SIDE.3『記憶』 ある晩 結婚して三年になる夫の顔をつくづくとみた

 人工知能の入門書を読んでいて、フレーム問題についての部分で思いだしたのが、この「記憶」という作品でした。フレーム問題とは、知能が機能するためには、その活動する世界についての、充分な知識が必用であるという事だそうです。
 例えば、チェスをプレイできる人工知能は、チェスの盤面上の世界については、当然ながら充分な知識を持っていますが、その世界(フレーム)を越えると、機能する事は不可能になります。
 そう考えると、人間の脳は驚くほどの能力を発揮しているという事になります。逆に言えば、フレームについての知識を失っていくと、我々の世界は崩壊するでしょう。この作品が描いているのがまさにそれです。
 谷山浩子は、色々な分野で驚くほどの洞察力を発揮しますが、これもそのひとつですね。吾妻ひでおの映像化も、世界の崩壊の過程を実にリアルに描いています。
 この作品は、それだけでは終わっていません。世界が崩壊して取り戻した記憶とはいったい何だったのでしょうか?
 話は変わりますが、ここで一つの遊びの紹介をしたいと思います。
 それは「宇宙人ごっこ」と言います。一人でも複数の人間でもできます。ゲームは、まず自分が宇宙人になりきる事から始めます。その瞬間から、あなたは周囲の世界への知識から切り離されます。いわば、強制的にあなたのフレームを崩壊させる訳です。
 なかなか面白い体験ですが、それから生じる結果に責任は持てません。悪しからず。
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