まえがき
太古の昔から人は人形をつくり、それを心の支えにしてきた。ある者は人形を慈しみ、心のなぐさめを求め、また、ある者は五穀豊穣を祈り、また自分にふりかかってくる病気や災いを人形が代わりに受け止めてくれるように願った。こうして永い年月の間、人形達は人間を支えてきたのである。
だが、ごくまれに『人間の心の友』という存在だけに留らず、普通の人形の役割を超越してしまう人形達がいる。前のお話で読者のみなさんとお友達になった、まりちゃんや胡蝶がそうだ。筆者はこういう人形達をサイキックドールと呼ぶことにする。彼(彼女)らは宇宙の意志によって不思議な命を得、その比類なき力は妖怪をも凌駕する威力を秘めている。
だが、サイキックドールといっても、まりちゃんのような人間の味方ばかりとは限らない。あらゆるものに闇と光があるように、人間の歴史が始まった頃より、闇には闇のサイキックドール、光には光のサイキックドールが存在し、人智を越えた領域で戦ってきたのだ。けだし、これもまた『宇宙の意志』の発現というべきであろうか。
久遠に続く輪廻転生の中を、様々な生命体が自らの運命に従って生きてゆく。しかし、その連鎖も宇宙の記憶のほんの一部でしかなく、この物語も宇宙の見た一睡の夢にすぎないのだ。
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